新製品が発売されるたびに、アップルがiPhoneに「近距離無線通信(NFC)」技術を採用するのではという噂を耳にしてきました。これについて、米モルガン・スタンレーのアナリストは、アップルが、モバイル決済市場開拓の一環として、いよいよNFC採用の構えを見せたと分析しています。これまで切望されてきたNFCの技術は、果たして次期iPhone 6に搭載されるのでしょうか。米国のMacRumorsが伝えています。
アナリストのクレイグ・ヘッテンバック氏は先日、投資家宛ての書簡で、アップルのライセンス契約、財務や特許申請の状況などを引き合いに出し、iPhone 6にNFCが搭載される可能性が高いと指摘しました。
また、同アナリストは、NFC技術は既に確立されており、今後アップルが採用すれば、商業利用が活発になるだろうと予測しています。
アップルはこの件について何も公表していません。とは言え、アップルはこれまで、AirDropやiBeaconsで使う近距離通信機能にWi-FiやBluetoothを採用するなど、類似となる技術を模索しており、近距離無線技術の可能性を探っているのは明白です。
同社が最近行った特許出願は、セキュリティ性能の高い、NFC内蔵のいわゆる「おサイフケータイ(携帯電話をかざして支払いができる)」に関連するものとされています。アップルはまた、自社のPOSシステム(販売管理システム)を、NFC搭載のものに改良中のようです。
米モルガン・スタンレーによれば、アップルは、無線通信用部品の供給先として、オランダの半導体大手NXPセミコンダクターズ(以下、NXP)と提携し、NFCをモバイル決済システムの主要技術に採用するとみられています。両社は既存の提携関係で、以前にもiPhone 5sに搭載の「M7」コプロセッサを供給しています。
NXPは、アップルのモバイル決済エコシステムの構築に伴い、体制を整えているようです。同社は2013年度第4四半期に、ある企業とライセンス契約を締結しています。iPhone 5sに指紋認証センサーが搭載されたことから、その企業はアップルなのではないかと考えられています。
アップルが最近、特許申請を行ったことから判断しても、次期iPhoneにNFCや認証技術が搭載される可能性は高いとみられています。
NXPはまた、iPhone 6の製造に備えて、IP開発に関する戦略的な提携を結ぶなど、自社の研究開発強化に乗り出しており、こうした一連の動きによる収益を下期に見込んでいるようです。
アップルがモバイル決済システムの導入に積極的だという噂はここ数年断続的に続いています。同社のエディー・キュー(インターネット関連担当役員)氏については、販売業者などにモバイル決済サービスの導入を持ちかけ、小売店向けサービスの開始に取り組んでいるようです。また同社で長年にわたりオンラインストアの幹部を務めたジェニファー・ベイリー氏も、同ビジネスの担当責任者に任命されたと伝えられています。
一方、上層部の承認としては、ティム・クック(最高経営責任者)氏が先日、第2四半期の業績について電話会議を行った際、モバイル決済システムについて「指紋認証の機能同様、ずっと考えていたことだ」と発言し、その導入を認めているようです。
NFCを内蔵するという噂の情報源は、米モルガン・スタンレーに限ったことではありません。米ブライトワイヤも今月初め本件に関する情報を公表しましたし、アップル関連の"情報通"として知られる台湾KGI証券のアナリスト、ミンチー・クオ氏も先月、iPhone 6にNFCが搭載されるとの見立てをレポートしています。