アップルは米国時間の27日に10月~12月期決算を発表しました。iPhone・iPadの売り上げは相変わらず好調で、ともに過去最高を記録。しかし、純利益は前年同期比0.1%減の131億米ドル(約1兆3400億円)で、4四半期連続の前年実績割れとなりました。New York Timesが伝えています。
アップルiPhoneの販売が相変わらず好調です。長らく携帯電話ビジネスには「上昇したものは必ず下降する」という原則がつきものでしたが、アップルに関してはその限りではないようです。
この原則破りがかつてないほど鮮明化したのは27日。アップルは直近四半期のiPhoneの売上を5100万台と発表しました。これは過去最高の数値で、前年同期は4780万台でした。
北米でのiPhoneの売上はやや低下、これは一部には、顧客の需要に対して新iPhoneの供給を追いつかせることができなかったアップルに責任があります。しかし、中国、ラテンアメリカ、ロシアなどの市場でのiPhone需要は強く、全体の売上を右肩上がりにすることに貢献しました。
「iPhoneビジネスでもっとも重要なことの一つは、新興国市場でどう上手くやるかだ。この点で、最高の四半期を迎えることができた」と、ティム・クックCEOは業績報告会で述べました。
初代iPhoneが生まれた7年前から、iPhoneは競合他社となる古参の大企業や新参企業を蹴散らしてきました。ブラックベリー、エリクソン、HTC、モトローラ、ノキアはひととき頂点をきわめましたが、iPhone以後、奈落の底に落ちて行きました。最近では、最大のライバルであるサムスンも、スマートフォンの売行きは減速ぎみとなっています。
アップルは2013年終わり、12月28日を最後とする直近の四半期、最高の売上を示しました。アップルは昨年、1機種のみではなく、2機種の新iPhoneを発表。今までなかったことでした。また新iPadも2機種がリリースされました。さらに日本最大の携帯キャリアであるNTTドコモとの提携も決まりました。
これらの尽力が、iPadの売上2600万台につながりました(昨年は2290万台)。さらにアップルは、480万台のMacコンピューター(昨年は410万台)を売り上げました。その結果、全体としては131億米ドル(約1兆3400億円)の利益となり、これは昨年比で言えば横ばいですが、それでも競合他社の羨望の的です。収益は昨年比6%アップの576億米ドル(約5兆9100億円)。
この好調な売上発表にもかかわらず、投資家らは結果に満足していない模様。アップルの株価は時間外取引で8%減少して506.04米ドル(約52000円)となりました。しかし過去6か月で見れば、約25%上昇しています。
ウォールストリートのアナリストらの推計では、iPhoneの売上は5500万台。休暇のショッピングシーズンがどう出るかが、アップルが健全な成長を続けるか、横ばいとなるかの重要な指標になるとアナリストらは見ています。
財務関連の調査会社Sanford C. Bernsteinのアナリストであるトニ・サコナーギ氏は、米国および欧州のような市場に注意を向けながら、「失望の主な要因は、iPhoneだ。すでに市場が成熟しつつあるのかもしれないという懸念だ。多くの投資家の心配は、すでに富裕層のほとんどがハイエンドなスマートフォンを所有しているのではないかということだ」と述べました。
北米でのiPhone売上低下の理由の一つとして、クックCEOは、米国の携帯キャリアが契約期間を延長したことを挙げました。これまでは契約期間のしばりが20か月だったのを、AT&TやVerizonのようなキャリアは昨年、24か月に延長しました。このため、顧客は新しいフォンをディスカウントされた値段で買い換えることができませんでした。
しかしクックCEOは、北米や西ヨーロッパでのiPhone売上にはまだ余地があると考えており、「このカテゴリーの製品は、これらの市場でまだ成長を続けることを確信している」と述べました。
他方、アップルは新興国市場にも注力を続けており、これはライバルであるサムスンの成長が著しい市場でシェアを伸ばすため。2012年は、一時的にサムスンの旗艦モデルGalaxy SⅢがiPhoneの売上を超えました。しかしその後、Galaxy の勢いは衰えました。サムスンは昨年いつものようにド派手なマーケティングを展開したものの、Galaxy S4およびNote3はホリデーシーズン、期待されたほどの売上に達しませんでした。
アップルは昨年、カラフルで少し安価なiPhone 5cを新興国市場向けに発表しましたが、より高価なiPhone 5sの売上がiPhone 5cを大きくしのぐ結果となりました。これは想定外の出来事で、二つのiPhoneへの需要の有り様はアップルの当初の見立てとずいぶん異なるものとなりました。
これをクックCEOは、特にiPhone 5sの指紋認証IDセンサーに顧客が惹かれたためであり、予想以上の売行きにつながったとしました。
とはいえ全体で見れば、iPhoneの売上は上昇傾向にあり、アップルは今月から、世界最大の携帯キャリアである中国移動通信(China Mobile)と提携し、iPhoneの販売を中国で開始しました。アナリストらは、この提携により、iPhoneの売上は1500~3000万台に上るのではないかと推定しています。
クックCEOは、中国におけるiPhone関連の活動としては、先週こそ最高の週だったとし、さらに中国国内の別のキャリアでもiPhoneの販売を開始する予定だと述べました。中国移動通信を通じて、中国の16都市でiPhoneが販売されており、今年終わりまでに300都市にまで増えるとのことです。
「中国移動通信は、世界最大の契約者数を誇る。アップル社にとって、きわめて重要な分岐点になると思っている」と、クックCEO。
技術系の調査・コンサルタント企業Jackdaw Researchのアナリストであるジャン・ドーソン氏は、「アップルの業績発表は、その成長がiPhoneを超えて多様化していることを示している。iPhone自体の収益の伸びは、昨年比で見てもわずかだったが、驚くべきことではないが、iPad、Mac、iTunesの伸びを合わせたものは絶大だった。これはアップルにとって良いこと。なぜならアップルはその成長の大半をiPhoneに依存していたからだ」と、述べました。