マイクロソフト(MS)のオフィスに含まれるエクセルは、どんな仕事をしていても、一度は出くわすソフトウェア。その広がり、浸透ぶりは計り知れず、これ無しの業務は成り立たないという企業も多いはず。
アップルは昨年10月来、新規デバイス購入者には自社製の業務用ソフトであるNumbersやPagesを無料で提供するという戦略を展開、MSオフィスの牙城を崩しにかかりましたが、あまり目立った成果は上がっていない模様です。日本経済新聞電子版が伝えております。
やはりエクセルへの支持は根強い...。無料提供という大盤振る舞い後にもかかわらず、そんな声が嘆息まじりに聞こえるほど、アップル表計算ソフトNumbersは支持を集めていません。
Numbersはアップルならではのデザインの洗練、処理速度の速さなどが高評価を受けてはいるものの、まったくと言っていいほど利用されていないのが現状です。長らく使い慣れたソフトウェアがあれば、多少それより優れたものが出てきたとしても、よほどの機会でもないかぎり、別ソフトに移行しようと思う人は少ないのかもしれません。
ましてそれがもっぱら仕事で使うソフトであり、マニュアルを読んで一から覚え直さないといけないなんて考えると、つい及び腰になってしまうのも無理ありません。
アップルは以前に比べ、法人向けの販売に注力するようになっており、そのシェアも伸びています。MSの業務用ソフトのパッケージであるオフィス、ならびに表計算ソフトであるエクセルは値段が高いと言われることがしばしばですが、これに対抗するアップルの業務用ソフトは無料。
ワープロ、表計算、プレゼン等の自社の業務ソフトを無料化すると発表した際、アップルのエディ・キュー上級副社長は、「タダは素晴らしい」と述べたとされていますが、今のところ目立った成果は上がっていません。無料ではないし、値段も安くない表計算ソフトの定番であるエクセルの圧倒的シェアを前に、アップルは打つ手がない様子です。
クラウドを利用したデータ保存・共有のサービスについては、業務用としても普及しているDropboxやEvernoteがありますが、これに対しては、グーグルもアップルもMSもそれぞれ独自の展開を示しています。PCにかぎらず、スマホ、タブレットなど端末の違いを超えてシームレスに使用できるよう、各社は進化を続けているところ。
アップルのスティーブ・ジョブズ元CEOは2011年初頭、Dropboxのドリュー・ヒューストンCEOに買収提案をしたことがありましたが、これは実現しませんでした。ジョブズはすでにクラウドの時代を見越していたわけで、Dropbox社買収はもちろんこれに関わっています。
しかしその半年後、アップルはiCloudを発表。Dropboxを「殺しに来た」とも言われました。しかし今もDropboxは生き残っており、これはDropboxのきめ細かい、使い勝手の良さがユーザーに支持されているからです。
クラウドが標準サービスとなりつつある一般の業務用PCおよびソフト市場は、今もマイクロソフトの優勢が続いています。企業のPC導入例でも、ゲーム会社などがアップル製のそれを採用する例はあるもののまだまだ数が少なく、一般の企業はやはりウィンドウズ搭載のPCを選ぶケースが大半です。アップルの企業向け市場への食い込みは、モバイルの世界と異なり、シェアは低いままです。
アップルとマイクロソフトは、永遠のライバルであり、それぞれの新製品や新サービスが出るたびに互いに罵り合うのが慣例でした。しかし最近は、知的財産権をめぐる紛争などで、両者が歩み寄りを見せる場面も増えてきています。それは、共通の敵であるグーグルの存在感が大きくなっているからです。
マイクロソフトの覇権はまだ続いているとはいえ、イノベーションを軸とする新製品発表という肝心要の世界においては、アップルの真のライバルはグーグルです。対マイクロソフトという古風な構図は、なじみの喧嘩友達との馴れ合いが感じられますが、グーグルという新たに台頭してきた強力すぎるライバル相手では、アップルも気を引き締めていく必要があるのかもしれません。