時間の経過とともに、あらゆるものは陳腐化します。iPhoneが世に出た当初、「革命的」だと絶賛されました。 時は移り、2013年も残すところ後わずか。今を生きる我々の目に初代iPhoneはどのように映るのでしょうか。 米国のBusiness InsiderがiPhoneの過去を振り返ります。
初代iPhoneは、一つの奇跡でした。iPhone以前のスマートフォンは、まだ半分がキーボード、半分がスクリーンという不恰好な代物でした。当時のモバイルフォンではウェブサイトの表示もままならず、ちゃちなモバイル版サイトを余儀なくされたもの。
しかし、iPhoneがすべてを変えてしまいました。
私たちがいま愉しんでいるiPhone体験が一夜にして可能になったわけではありません。アップルが少しずつ機能や特徴を追加していく何年もの長い歳月が必要でした。今日の水準から振り返れば、初代iPhoneはがらくた同然にすら映ります。
いかにiPhoneが長い道のりを辿ってきたかを知るため、当時を思い起こしてみましょう。ここには大切な教訓が一つあります。人は製品を、何が出来て何が出来ないかで評価する傾向があります。しかし製品というものは長い時間をかけて成熟していくということを忘れてはなりません。
iPhoneの歴史を振り返ると、最初は出来ないことだらけでした。しかし今日のiPhoneを見れば、それがどれほどの進化を遂げてきたかが分かります。
アップルは来年、また主要な新製品を発表することでしょう。iWatch?テレビ?何が出てくるか未だ分かりませんが、この教訓を頭の片隅に置いておくといいかもしれません。
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初代iPhoneは一つの奇跡でした。当時のiPhoneのライバル機種はこんな具合でした。
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今見ると、この初代には基本的な要素がごっそり抜け落ちている点には驚かされてしまいます。通信はEDGEまたは2Gワイヤレス。あり得ないほど遅速です。ダイアルアップ並みでした。この2G接続、当時AT&Tしか携帯キャリアが存在しなかったことも残念なことでした(初代iPhoneは日本未発売)。AT&Tは、通話がよく落ちるなど、問題山積。
App Storeもなかったので、Angry Bird、Instagram、Candy Crushももちろんありません。愉快なものは皆無でした。
iPhoneをiPhoneたらしめているのは、言うまでもなくアプリです。初代iPhoneが出たころ、App Storeは存在しなかったのです。当時スティーブ・ジョブズは、App Storeが必要かどうかもよく分かっていませんでした。アプリのすべてを完全にコントロールしたいと思っていたジョブズも、結局は譲歩し、App Storeを開くことになりました。
しかしApp Storeができたといっても、それが一日で今日のような姿になるわけもありません。それは大きな賭けでした。
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当時のiPhoneはブラックでした。それしか選びようがありませんでした。壁紙を変更することもできませんでした。
今では当たり前のカット、コピー、ペーストも、出来るようになるには3年がかかりました。
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セットアップするには、iPhoneをPCに接続する必要がありました。単体でセットアップできるようになるまで5年がかかりました。
Eメールやメッセージを書く際のキーボードも、ランドスケープモードでは機能しませんでした。
メッセージで画像を送ることも無理でした。
ナビゲーション系のアプリもありませんでした。これはアップルがナビゲーション機能を搭載させなかったというよりも、他のアプリ開発者にこれを何年もさせなかったということです。
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カメラは2メガピクセルでした。もちろんビデオもありません。
通知センター、Siri、コントロールセンターもありません。今では当然のように見られている機能は何もなかったのです。いったい何が凄かったのか分からなくなるほど、何もありませんでした。
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しかし値段は4GBモデルで499米ドル(約52000円)もしました。携帯キャリアからの格安の契約プランもありませんでした。
「だから何なの?」とあなたは言うかもしれません。
「それがどうしたの?」という気持ちも分かります。ここで強調しておきたいことは、テクノロジーというものは、成熟するまで長い時間がかかるということです。リリース当時、iPhoneは奇跡でした。しかしここまでの道のりは実に長いものです。
あるハイテク企業が新製品をリリースする時、このことを覚えておく必要があります。ある新製品が安定しているように見えても、そのバージョン1はまだ、始発点に過ぎないのです。