グーグルは今年2013年、創業15年を迎えていますが、独善的な自己満足に陥っているハイテク系の他社とは異なり、慢心や気の緩みを見せる気配はありません。サーチエンジン最大手としてのグーグルは、インターネット経済のあらゆる分野でその地位を確固たるものにしており、2013年はグーグル創業以来記念すべき一年だと言っていいかもしれません。米国のMashableが伝えております。
アップル、フェイスブック、アマゾンに並ぶ、インターネット時代の四強(サムスンは五番手)の一つとしてのグーグルは、ハードウェア、ソーシャルネットワーキング、小売り、テレビ、そしてもちろん検索という総ての分野で地位を確立している唯一の企業です。各分野を別々に見れば、優劣や強弱の差はありますが、どの分野においても健闘が目立つグーグルを完全に外すことはできそうもありません。一体何が本当の狙いなのか分からないほど焦点があいまいに見えるグーグルですが、今年2013年の業績は見事なものです。
この成功は、グーグルグラス、Moto X、Chromecastなどの新製品リリースから買収劇に至るまでの、様々な活動の結果。ここで、今般のグーグルの驚異的な成長に貢献した幾つかの重要なポイントについてまとめてみることにしましょう。
アップルが2007年にiPhoneを発表して以来、グーグルはアップルに追いつけ追い越せと躍起になってきました。この懸命の努力が今年2013年に実を結び、イノベーションの王座は、アップルからグーグルに移譲されました。光学的仕様の装着可能コンピューターで、一般消費者向けである、グーグルグラスの誕生です。
グーグルグラスは2014年まで本格的に市場に登場することはありませんが、グーグルは今年前半、これを一部の人々に対して配布を始めました。これが反響および反発?を引き起こし、今年も終わりに近づくにつれ、この製品がどれほど画期的なものなのか、現時点ではまだ不透明になっています。
グーグルグラスの問題は、これが「鶏が先か、卵が先か」の問題でもあることです。まだごく少数の人々が保有しているにすぎず、それが社会的に受け入れられたとは言えません。現時点では、グーグルグラスを着けても、他人から胡散臭そうに見られるのが関の山。
グーグルは、グラスからあやしげな要素を払拭するべく、例えばお洒落なメガネブランドのWarby Parkerなどと提携して、できるかぎりギーク(オタク)っぽくないデザインに仕上げることもできるでしょう。かりにグーグルグラスが大失敗に終わるにしても、アップルの御株を奪った製品としては大成功と言えます。
当のアップルは、iPhone 5s、5c、タブレットなど従来品の水増しのような製品を出しているに過ぎません。噂のiWatchはどうなることでしょうか。
今でも多くの消費者は、スマートフォンと言えばiPhoneだと思っているようですが、全世界のスマホのうち、4/5はアンドロイド搭載というのが現状です。これはすなわち、スマホ市場がPC市場ときわめて近似しつつあることを意味しています。グーグルは、マイクロソフトの役割を担いつつあるということです。
しかし違いもあり、ウィンドウズはマイクロソフトのドル箱ですが、グーグルはアンドロイドから一銭の儲けも得ていません。アンドロイドは、広告を売るための仕様です。グーグルは大きな市場の変化に乗って、デスクトップ時代からモバイル時代へと上手に移行しているように見えます。
他方、アップルの見方は異なるようです。ティム・クックCEOは9月、ブルームバーグビジネスウィークのインタビューで、アンドロイドの市場シェア優勢にもかかわらず、モバイルトラフィックの55%がiOSデバイスから出ているとする統計を挙げていました。クックCEOはまた、アンドロイドデバイスの多くを「ジャンク(ゴミ)」だとほのめかす発言すらしました。ここも、広告を売るのが目的だとした場合、議論の余地あるところだと言えます。
アップルのマップアプリがひどい出来映えであることが判明した2012年、世界はあらためてグーグルへの敬意を新たにしたものでした。しかしマップというカテゴリーは進化を続けています。Wazeというイスラエルの企業は、交通状況などのリアルタイムの情報をマップに組み込み、マップというカテゴリーでトップを走っていました。
Waze社のマップインフラは素晴らしいものだったので、伝えられるところによると、アップルもフェイスブックもその獲得に乗り出していたとされています。しかし最終的には、グーグルがその買収に成功。結果として、インターネットの世界におけるマップの覇者はグーグルという世評を保つことになったのでした。
グーグルは8月、同社初となるスマートフォンMoto Xを発表。これはグーグルが、傘下に収めたモトローラとタッグを組んだ製品でした。Moto Xは、モトローラを120億米ドルで買収後、初のメジャーな製品リリースとなりました。その評判は決して悪いものではないですが、強いセールスポイントに欠けたものとなっています。「オーケー、グーグルナウ」とささやいてフォンを起動するなどのタッチレスコントロールという面白い特徴をもつ、Verizon Droidのスマホが、Moto X発表の1週間前に出たことから、その印象がかすんでしまった感もありました。
別の言い方をすれば、これはブレークスルー(革新的製品)ではありませんでした。Moto Xは、グーグルが他のアンドロイド系デバイスメーカーに向けた一つの挑戦状です。アンドロイドの本家が提供するスマホという意味で、同社の特許の主張をしていると見られていましたが、グーグルのシステムにシームレスに組み込まれているとは言い難いのが現状です。
グーグルは、Google TVやNexus Qのような失敗の後、再びテレビというカテゴリーに挑みました。Chromecastの登場です。これはUSBドライブのようなデバイスですが、USBポートではなく、テレビのHDMIポートに接続します。これによってPC、フォン、タブレットから映像をテレビに送ることができるようになります。
ChromecastはApple TV同様、全部入りのソリューションというより、急場しのぎの次善策的な商品。しかしApple TV同様、たくさんの支持を得ています。このグーグルの新製品は今年10月、アマゾンでベストセラーのガジェットとなりました。
グーグル株価は10月ついに4桁の大台に乗り、Priceline、Seaboard、Berkshire Hathawayを含むエリートクラブの仲間入りを果たしました。このような心理的な気負いはときに無意味で、株式分割が近づけば、また3桁に逆戻りするかもしれません。しかしこれは、今年のグーグルの財務状況がきらびやかで見事なものであることを裏打ちしている事態と言えます。
アップルは今夏、App Storeのアプリダウンロード数が500億回に達したと発表しましたが、グーグルもまた同じ数値を突破しました。グーグルプレイは、App Storeが2008年に登場した数か月後に、アンドロイドマーケットとして登場。しかししばらくは、App Storeの二番煎じと見られた期間が長く続きました。これは一般に、開発者がiOS向けのアプリを開発後(数か月後であることが多い)に、アンドロイド向けのものを開発するという傾向があったためでした。
しかしこの傾向にも変化の兆しが現れ始めています。アンドロイドはすでにグローバル市場の80%をも占めるわけですから、「iOSが何よりも先」という戦略も徐々に難しくなってきます。もしアンドロイドの方が新しい開発において有利となると、消費者のiOSへの執心も頼りないものになってくることでしょう。