日本経済新聞電子版は29日、アップル関連の記事を二つ掲載しており、ともにアップル復調の兆しを伝えるものとなっています。
米国時間の28日に発表された7~9月期決算は、4~6月期に比べると利益率は改善。また純利益が前年同期比9%減の75億1200万米ドル(約7300億円)と3四半期連続で前年割れとなりましたが、売上高は同4%増の374億7200万米ドル(約3兆6700億円)で市場予想を上回りました。日経は前年割れの要因として、単価の安い旧機種や小型版の販売比率が上がっていることを挙げています。
日本ではNTTドコモが今秋からiPhoneの取り扱いを開始したこともあり、アップルの業績を下支えした格好ともなりました。アップルの世界全体の売上高の4分の1を、日本と中国が占めると言われていますが、今期は、中国では発売前倒し、日本ではドコモの取り扱い開始などが、アップルの決算に大きく貢献したポイントと見られています。しかし本家米国や欧州ではパッとしない様子です。
また10~12月期の売上高見通しは、アップルによると、550億~580億米ドル。これは市場予想を上回っています。ずっと下落が続いていた売上総利益率は横ばいとの見通し。いずれにせよ「下げ止まり」だけは確保するという意気込みが感じられます。
機種に目を向けると、7~9月期の売上高は、iPadで前年同期比13%減(販売台数1410万台→1400万台)、Macは15%減(販売台数460万台→490万台)と不調。特にiPadは、新モデル発売の噂が広がっていたことから、買い控えがあったと見るのが妥当です。他方、iPhoneは17%増(販売台数2690万台→3380万台)と好調で、7月~9月期としては過去最高を記録。やはり9月20日に新発売されたiPhone 5sとiPhone 5cの売行きが大きく寄与した模様。iPhoneが売上高に占める比率は6ポイント伸び52%。
アップルの株価については、1株当たり利益は8.26米ドル(前年同期は8.67米ドル)で、市場予想よりは大幅増。起伏がありながらも、基本、横ばいが続いています。
日本では今秋からドコモのiPhone取り扱い開始もあり、ソフトバンク、KDDIと携帯大手3社が揃ってアップル製品を販売。これら3社の競い合いはまさにアップルの思う壺となっており、じつに順調な展開が続いています。また各社ともに販売補助金を投入することで、購入への敷居が低くなっています。
中国では、ティム・クックCEOの「柔軟な価格設定による実験的な市場開拓」というビジョンから、優先的に製品が供給され、品切れによる機会損失を減らす工夫がなされ、また旧モデル、新モデルでは複数モデルを用意し、消費者の選択肢も広げられています。
中国のアップル公認代理店の数は、毎年2倍超えというものすごいペースで増加中。すでに販売拠点は2万店を超えています。中国政府からの積極的な後押しもあり、サービス水準の改善、流通網の整備が進められています。
このような規模の展開は、コンテンツやアプリの販売についても同様で、アップルのソフトウェア関連事業の伸びは年率2割の成長が続いています。
ティム・クックCEOは同日の決算報告で、増益転換の起爆剤となる「新しい製品」の導入については、「2014年中のどこかで」と述べたとされています。お楽しみはまだ遠いようです。