日本最大の携帯電話会社であり、モバイルサービスのパイオニアでもあるNTTドコモは、世界の主要な携帯キャリアの中で、今もiPhoneを販売していない数少ない"抵抗勢力"の1社です。その抵抗のために、ライバルの2社に転出した契約者の数は、過去4年半の間で320万人にのぼります。それでもNTTドコモは、自社のスマートフォンを中心に構築してきた、サービスの"ウォールドガーデン(walled garden)"を断固として守るつもりのようです。米国Reutersが伝えています。
NTTドコモのCEO加藤薫氏は、3日に行われたReutersとのインタビューで「当社はライフスタイルのシステムを開発することを試みている」と述べています。
顧客のみならず同社の幹部ですら、iPhoneの販売契約を結ぶことをますます強く求めていますが、NTTドコモのアップルに対する態度に変化の兆候は見当たりません。
加藤氏は「最大の課題は、当社が提供しているサービスへの影響にある」と述べています。 ドコモが提供する幅広い独自の機能は、iPhone世代となった人々をもはや魅きつけていません。最終的には、アップルとの合意に達するか業界トップの地位を失う危険を冒すか、いずれかになるだろうと予想されています。
BNPパリバ証券の山科拓アナリストは「NTTドコモは、今年の販売は好調だが、顧客はいまも他社に転出している。このような状況では、ドコモはiPhoneを導入する以外に選択の道はない」と述べています。
日本の顧客は、世界で初めて大規模モバイルウェブアクセスサービスを開始し、ストリーミングテレビを携帯電話にもたらしたドコモの統合システムを、かつては支持していました。しかし幅広い独自機能は、そのファンもいる一方で、iPhoneの魅力に十分対抗できているとはみなされていません。
「例えば、ドコモの写真サービスは使い勝手が悪く、InstagramやFlickrがある今、わざわざ使う人がいるとは思えません」と山科氏は述べています。
ウォールドガーデン(walled garden)
NTTドコモの抵抗は、iPhoneの需要に屈した海外の抵抗勢力と比べると、対照的です。T-Mobile USのCEOは、4月から開始したiPhoneの販売により同社の製品ラインナップの"巨大な穴"がふさがれた、と述べました。世界最大の携帯キャリア、チャイナモバイルは、4G技術を持つサービスに移行し、すでにiPhoneを所有している1,000万人の顧客がそのネットワークにつながることを可能にしました。
NTTドコモのかたくなさは、日本で特に注目すべきです。日本では、iPhoneはスマートフォン市場での首位をすでに確立し、2012年の10-12月に42%の市場シェアを獲得しているだけでなく、海外では人気が高いサムスンのGalaxy シリーズに国内では勝っています。サムスンは、西ヨーロッパ地域では46%のシェアを獲得していますが、日本ではiPhoneの5分の1の売上げしか達成していません。
NTTドコモの姿勢はまた、アップルが課す厳しい契約義務が反映しているのかもしれません。両社は契約交渉の内容を秘密にしていますが、加藤氏の前任者は昨年の株主総会において、アップルから全販売台数の半数をiPhoneで構成するよう要求されたと述べていました。
すべてのデバイスに企業ロゴを印刷する、というドコモの要求も、スタイルに敏感なアップルとの対立の要因となっているようです。
今のところNTTドコモは、よりフレキシブルなアンドロイドOSを搭載したスマートフォンを持つ顧客を、保持し続けることを望んでいるようです。今夏は、ソニーのXperia AとサムスンのGalaxy S4に重点を絞ったマーケティング活動を行っています。Xperia Aは、5月半ばの発売以降83万台販売され、秋までに100万台、という目標の達成も間近です。しかしGalaxy S4は、これまでの販売台数がXperiaの半分にも満たない状況です。
顧客の転出は現在も続いており、金曜日に発表された月次データから、6月は14万6900人の既存ユーザーが別のキャリアに転出したことが示されました。53か月連続の転出超過です。
ただ、スマートフォンの全体的な需要の押し上げにより、NTTドコモ全体の契約者数は、上半期で63万人増加しています。この大きな利益から、NTTドコモはアップルとの持久戦を選択するかもしれません。
iPhoneの人気が日本ですぐに衰えることは考えられません。一方で、ドコモの幅広いネットワークと信頼性は大きなセールスポイントです。ライバル社のある幹部は「ソフトバンクとKDDIは、いずれiPhoneの販売が飽和状態に達する。アップルは、NTTドコモにiPhoneの販売を求める以外に選択はない。ドコモは待っているはずだ」と述べています。