アップルは米国時間の23日、2014年1~3月期の決算報告を行いました。相変わらず莫大な利益をたたき出しているようですが、その成長率の鈍化を嘆く声も聞こえてきています。まあ、近年のアップルの決算報告では毎度のことですが...。米国のNew York Timesが伝えております。
アップルは10年以上目覚しい成長を続けていますが、その勢いに翳りが出始めているようです。同社が23日に行った1~3月期の決算報告では、前年同期436億米ドル(約4兆4500億円)の売上高に対して、今年は456億米ドル(約4兆6500億円)と微増。相変わらず巨大な収益を上げており、純利益は昨年同四半期95億米ドル(約9700億円)から102億米ドル(約1兆400億円)へとアップ。しかしこの成長率は数年前に同社が弾き出していたとんでもない数字に比べれば小さいものとなっています。
今回の結果はほぼ間違いなく、アップルのティム・クックCEOへのプレッシャーとなります。同社の財政的成長を持ち上げるためにも、スマートウォッチやアップルTVのような「新しいカテゴリー」をリリースする方向へ強いプッシュが働くことになります。アップルは23日、投資家のために、昨年の600億米ドル(約6兆1300億円)分の株の買い上げに加えて、さらに2015年末までに300億米ドル(約3兆600億円)の買い上げも発表しました。また四半期分の配当も8%アップ、株式分割もするとのことです。時間外取引では、アップルの株価は8%上がりました。
アナリストらによると、クックCEOは、自社株買い(買戻し)を増加したことは「アップル社幹部および管理部門がアップルの未来に強い自信をもっている記し」と述べたと言います。iPhoneの販売台数は、前年同期の3740万台に対して、今年は4370万台と増加しましたが、今年のiPadの販売台数は、前年同期の1950万台から1635万台と微減しました。昨年秋、大きい方のiPadでは目立つ再デザイン化が施されたにもかかわらず...。
アップルの驚異的なまでの上昇は、主にiPhoneに支えられているものですが、これが頭打ちになっていることは、ほぼ間違いありません。米国の財務調査会社Sanford C. Bernstein社のトニ・サコナーギ氏は、「もしアップルが次の5年間、これまでの5年間同様の成長を続けるとすれば、オーストラリアのGDPに近づくことになる。アップルは2年前、50%を超えるという信じられないレベルの飛躍を遂げていたわけだが、これを考えると、今四半期は成長が止まっているようだ」と述べています。
アップル社をめぐる大きな疑問は、今後も順調な成長を続けることができるのかどうかというものです。アップルは何年ものあいだ、iPhoneやiPadでハイテク業界を席捲してきました。しかしアナリストや投資家らは、アップルはすでにピークに達したのではないかとの見方に傾きつつあります。
アップルiPadの売上の減速は、予想よりかなり早いものでした。直近四半期のiPadの売上は、前年同期比で約300万台減少。これはおそらく、iPadの半分ほどのコストの廉価なタブレットが数多く出回っていることが理由でしょう。アマゾンのキンドルファイアなどは品質を大きく向上させています。
iPhoneの売上はそこそこの伸びを示しています。昨年同期比で600万台以上が売れました。アップルは最近、世界最大の携帯キャリアである中国移動通信(China Mobile)と提携しましたが、これが売上増に寄与しました。
しかしアップルにとって今後の懸念材料となるのが、中国を始め、スマートフォンの売上が業界として減速しつつあることです。調査会社のIDCによると、スマートフォンの売上成長は2013年は60%でしたが、今年はわずか20%になると見られています。一定の所得をもつ人の多くはすでにスマホを購入済みなのです。
戦略コンサルタント企業のFrank N. Magid Associatesのテロ・クイティネン社長は、「中国のスマホ売上の成長は全体として、予想を超えた速さで減速している。こういう見込み違いはしばしば、すべての業界を襲う変化球の一つだ」と述べています。
この春の四半期は、アップルにとってさらに厳しいものとなりそうです。アップルは今秋、大きなスクリーンをもつ新iPhoneを2機種発表すると期待されており、多くの消費者は、この新モデルが出るまで買い控えに回ることになりそうです。
「というわけで、アップルに対するプレッシャーはますます強烈なものとなるだろう」と、クイティネン氏は予測しています。