Appleを巡る神話トップ10を総点検! iPhone、iPad、スティーブジョブズ
アップルの新製品である「新しいiPad」は、案の定、好評のようです。iPadはもうすでに、この地球上で、タブレットのデファクトスタンダードと化した観すらあり、この調子が当分は続くことでしょう。とはいえ、アップルストアの前にキャンプを張って丸一週間も発売を待つほどのものでしょうか...。英国のKnow Your Mobileが、飛ぶ鳥を落とす勢いのアップル社のあり様を、その神話トップ10という形で、総点検かつ考察しております。筆者は英国のジャーナリストですが、いかにもイギリス人らしいアイロニーの効いた批判記事です。
「新しいiPadを我先に手に入れるため、一週間も待つ必要があるか。答えはノーだ。」
冬の寒い気候で雨も降る中、400英ポンド(約53000円)を払うために列を作るというのは変な話だし、はた迷惑ですらあります。オンラインで先行予約すればもっと簡単なはず。しかしながら、アップルには「ブランドの力」があり、消費者はそれに感化されているのです。
このブランドの力こそ、アップルがカルトと呼ばれる所以です。そしてカルト商品には付き物の興味深い(不思議ですらある)歴史、人物伝、神話が数多くあります。
勿論、そのほとんどが真実ではありません。アップルは一企業です。自明かつ単純に。またカルトでもありません。創始者であるスティーブ・ジョブズは、私たちと同じく不完全な一人の人間で、もし彼の伝記を信じるとすれば、私たち以上に不完全な人間でした。
以下は、この世界一大きな家電メーカーにまつわる神話?誤解?(皆さんお気に入りの!)のリストです。では、お楽しみを!
1. アップルがアプリを発明したモバイル用アプリはアップルが発明したと思っている人が多いようです。違います。事実は、アップルのiPhoneとiPodが、モバイル用アプリを大規模に消費者に広めたということです。カレンダーアプリ、 Ringtone editors、Snakeのようなゲームアプリは、1990年代後半からすでに出回っています。GPRSとEDGEのような新しいデータ送信技術の発展に続いて、アプリの展開(配備)は容易となりました。ノキアもこのトレンドに直ぐ飛びつきましたし、マイクロソフトもそのオリジナルのポケットPCを出しました。
パームのような企業は2002年までに、すでにスマートフォンをリリースしていました。TreoSmartphoneと呼ばれるもので、ワイアレスのウェブ閲覧、Eメール、PCとの同期ができ、また第三者企業の一連のアプリを備えていました。これら全て、アップルのiPhone、iPod、アップルストアに先行するものでした。
2. アップルがタブレットを発明したアップルがタブレットを発明したわけではありません。それを人口に膾炙するのに大きな役割を果たしたということです。タブレットPCの歴史は、遥か1960年代に遡ります。1968年、アラン・ケイによって作られたDynabookというコンセプトが嚆矢となります。このDynabookコンセプトは子供向けのものでしたが、現在のGUI(グラフィカルユーザーインターフェース)の要素全てを、1972年という早い時期からすでに体現していました。
時代に早すぎたというのは控え目な言い方で、Dynabookは真に革命的なものでした。しかし、Dynabookは最初に商用化されたタブレットPCとはなりませんでした。最初に商用化したのは2000年代前半のマイクロソフト。ほとんど成功しなかったですが、マイクロソフトタブレットPCがそれに当たります。それでも、アップルiPadに先んじること10年を超えています。
3. iPhoneはいつでもスゴイ最初のiPhoneが出たのは2007年、iPodに電話機能が付いただけと思われていました。3G接続もなく、マルチタスキングもなく、ハードウェアも低質で、値段だけは高かったものでした。3.5インチスクリーンの320×480ピクセルのディスプレイ。4、8、16、32のメモリー容量と412MHzのCPU。今から考えれば、こういうこともできるぞということを示すだけの代物。人々はアップルもモバイル業界に参入できたということを知りました。
しかし、このデバイスは世界中で約600万台を売り上げました。これにiPhone 3Gが2008年6月に続き、欧州、米国の3G採用とも相まって、大量の消費者から利益を吸い上げました。
4. ティム・クックにスティーブ・ジョブズの代わりはつとまらないスティーブ・ジョブズが悲劇的な最後を迎えたのは、2011年のiPhone 4Sリリースの直後。ハイテク産業に携る 者全てが喪に服しました。一人のカリスマがこの世を去ったのでした。
スティーブ・ジョブズなしのアップルは上手く行かないという考えはばかげたものです。アップルは今も成長を続けており、将来的にもそうでしょう。新しいiPadやiPhone 5のように強力な商品が続々と登場します。噂のアップルiTVも控えています。PCビジネスの覇者として、止まる気配は皆無です。
アップルの株価は600米ドルに達し、iPhone 4Sの売上は記録を作りました。消費者も投資家も双方、ジョブズ以後のアップルの業績 に満足しています。
さらに、ジョブズのカリスマ性と影響にもかかわらず、アップル製品の偉大なヒット作の多くは、ジョブズの発想やデザインではありません。このことは見落とされやすい所です。元祖iMac、iPod、iPhone 3Gのデザインを手がけたのは、 アップル社インダストリアルデザイングループ担当上級副社長のジョナサン・アイブです。
5. アップルはフレンドリーな会社であるアップルは多くの人々から、フレンドリーな会社だと思われています。一般的には、グローバル資本主義に乗った顧客満足度の高い家電メーカーといった趣きですが、少し詳しく見ると、アップルは実のところ、他の多国籍企業と何ら変わらないことが分かります。
アップルは確かに、「リベラルアーツ」、「粋なデザイン」、「ユーザー体験」といったオーラをまといつつも、他の巨大企業と同じように、納税回避目的のオフショア口座を持ち、発展途上国で安い労働力を搾取し、米司法省から価格操作(価格つり上げ)の咎で告発すらされています。
アダム・ラシンスキーの新著『インサイド・アップル』は、アップルという神秘的なまでに秘密主義の企業の扉を開け、秘密確保のためになされる奇怪と形容したくなるほどのビジネスのあり様を見せてくれました。
この本によると、「アップルの秘密を洩らしたアップル社員は、解雇されるだけでなく、法律の許す限り最大の度合いで起訴される」と、スティーブ・ジョブズは語ったそうです。こうなると、さすがにフレンドリーな会社とは言えませんね。
6. Siri(音声アシスタント機能)は役に立つイギリスでは特に、Siriは、アップルが思うほど役に立っていません。確かに面白いソフトですが、正直まったくの役立たずです。Siriが本当に役に立つ時が一つだけあります。Siriを持っていない人に、それがどんなものかを見せてやって、いっしゅん優越感にひたる時だけです。これも数週ほど続くだけで、後はSiriのことなんか忘れてしまうのがせいぜいです。
7. スティーブ・ジョブズの年収は1ドルスティーブ・ジョブズはアップル社をものすごく愛していたから、年収1ドルでも働けた、そんなふうな神話です。勿論、あり得ない話です。ということは1997年から2011年まで、ジョブズがアップルから得た給与はわずか14米ドル?すでに億万長者なのでもう給料は要らない?
ジョブズが死んだ時の彼の個人資産は、 世界有数の経済誌フォーブスによると、約83億米ドルだったとされています。アップルも、シリコンバレーの他の大企業のように、幹部は業績ベースの賞与と遅い受領権の株式を得ていました。ジョブズはアップルの株式560万米ドルを保有していました。ティム・クックが2011年後半に後を継いだ頃、ジョブズは3億7600万米ドルの株式を与えられました。
8. iPhone以前に、タッチスクリーンデバイスはなかった多くの人々が、タッチスクリーンを発明したのはアップル社だと思っています。勿論、そうではありません。歴史家であれば、1960年代後半にイギリスの国立レーダー研究所で、E.A.ジョンソンが発明した容量性のタッチスクリーンこそ、最初のそれだと考えることでしょう。
しかし、タッチスクリーン式ディスプレイを最初にスマートフォン上で実用化したのは、Nokia 7710でした。2002年のこと。しかし1993年、IBMは、Simonと呼ばれるタッチスクリーンのハンドセットをリリースしていました。パームも2002年以降、タッチスクリーン式のスマホを出し始めていました。
9. アップルはユーザーのことを気に掛けている人々がどう思おうと、アップルはユーザーのことなんか気に掛けていません。アップルは自身がトレンド作りの担い手であり、新しいマーケットの開拓者だということを誇りにしています。ちょうどiPadやiTunesサービスがそうであるように。
アップルは一般大衆に耳を傾けているでしょうか。絶対に、ないことです。新しいマーケットを開拓するには、従来の常識を打ち破る革新的で創造的な思考が必要です。また人間離れした非常に優秀な人材も必要です。さらに堅牢な機密主義に守られる必要もあります。アップルにはこれら全てが揃っています。
iPadやiPhoneにFlashはありません。MacBook AirにCDドライブ付いてますか?ありません。iPadにUSBは?ありません。要するに、そういうことです。
10. iPhoneとiPadを脱獄するのは違法アップルの思惑とは別に、iPhoneとiPadを脱獄することは違法ではありません。米国議会図書館によると、同デバイスの脱獄は著作権法を破る、もしくは抵触することにはならないとのこと。つまり、私たちのハンドセットやタブレットをアンロックすることは、完全に合法ということです。
さて、以上がKnow Your Mobileが語る、アップル神話トップ10でした。アップルは神格化されすぎている企業ですが、少しは斜に構えて見直してみるのもいいかもしれないですね。あなたはどうお考えですか?
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