賛否両論のiPhone 5s、アップルの狙いは何なのか？
英国のThe TelegraphがiPhone 5sの新機能を紹介しつつ、新デバイスにおけるアップルの真の狙いについて結論付けています。
世界中のアップルストアで、すでに列に並ぶ人々がいます。新しいiPhoneの2機種が、20日（金）に発売開始されます。最初に並ぶ人々の列の長さが、ハイテクの王者であるアップルへの期待値の指標になるとも言われています。
10日の新iPhone発表会は、オンライン上に大きな反響を呼びました。Telegraphの記事で、もっともよく読まれたトップ5つの記事はどれもiPhoneに関するもの。しかし投資家らはまだ納得していない模様、アップルの株価は最大5％下がりました。「廉価版」とされていたiPhone 5cがそれほど安価ではなく、貴重な中国市場のシェアを獲得できるのか？という疑念が持ち上がりました。またフラッグシップとなるiPhone 5sも、既存のiPhone 5に比較して、本当に新機軸を打ち出せているのか？と訝る声も上がりました。
ネット上で定評のあるコメンテーターらは、iPhone 5cの新プラスチックボディを、廉価版導入という点と同じぐらい重要な要素として、アップルデザインの教祖的存在であるジョナサン・アイブ氏の新しい作品だということに注目しています。価格は469ポンド（約74,000円）。iPhone 5sの549ポンド（約86,600円）より少し安いだけです。これは上位層の底部分を狙う価格帯で、例えばHTCのフラッグシップであるOneより高価です。
※日本での一括購入価格は、iPhone 5cが52,920円～。iPhone 5sが68,040円～。
確かにiPhone 5cは見事な新デザインで目を惹きます。しかしiPhone 5sこそ、アップルのイノベーションの真骨頂。モバイルフォンの分野に革命を起こした企業であるアップルですが、「S」付きモデルのiPhoneの発表では、新デザインはなく、ちょっと新味を加えただけとして非難されることがしばしばです。
しかし今回のiPhone 5sはいつも同様に、機能向上したカメラ（予想通りですが、大切な部分）が付きますが、くわえて指紋認証スキャナーが搭載されています。ユーザーは指をホームボタンに置くだけでデバイスをアンロックすることができます。発表イベントでは、手に触れて試してみる時間が限られていましたが、この機能はかなり好感触で、かつてモトローラから出たようなものとは大違いでした。どんな角度からでも指を置くだけでフォンをアンロックできます。アップルストアで購入する際の身元認証にも使えます。この機能はいずれ、モバイル上のオンラインショッピングにおける業界スタンダードとなること間違いなしです。ちょうどiOSがアプリ開発者にとっての原動力となったのと同様です。
さらに重要なことは、iPhone 5sに強力な64bitプロセッサーが搭載されたことです。分かりやすく言えば、iPhone 5sは先行機種に比べ、相当に速くなるということを意味します。理論値で言えば、その計算力はラップトップやデスクトップのPCに匹敵し、今のところ他のフォンにはないものです。特にゲームやカメラで本領を発揮するでしょう。スローモーション撮影、1秒間に10枚撮り可能など、さらに使い方は増えるでしょう。
しかし批判も出ています。iPhone 5sはiPhone 5の焼き直しに過ぎないと。アップルは本当に飛躍したと言えるほどのことを成し遂げたのか？と。ここでアップルのプランは何であるのかについて、非常に分かりやすい点を見てみます。iPhone 5cは、ピンク、グリーンなど5色を揃えました。iPhone 5sにいたっては、ゴールドが加わりました。これらは小さな変化かもしれません。しかしこれまでアップルは長い間、ブラックとホワイトのみの色揃えだったことからすれば、今回のそれはいかにもアップルらしい美意識の現れと捉えることができます。
今回の新二機種は、既存ユーザーのアップグレード狙いに止まらず、新規顧客の開拓が真の狙いです。ゴールド色は、中国やインドなど新興市場で人気のあるカラー。プラスチックカラーは、西洋諸国ではアップルブランドとして広がりを見せるでしょう。つまりアップルはその戦略を作り直しただけと言えます。新興市場でそのプレミアムなブランドを確立し、さらに広範囲な層に受容されるべく拡大を続けるつもりです。ゴールドというのは、その象徴かもしれません。
