スマホ市場ピーク近し、最期の覇者はiPhone 5か?
大いなるスマートフォンの流行もいよいよ佳境を迎えつつある...。投資リサーチ会社International Strategy & Investmentの技術戦略チームの「預言者」ビル・ワイマン氏の見解です。同チームは数四半期先を見通していると言われています。米国のForbesが伝えております。
ワイマン氏によると、スマホの浸透率は来年でピークを迎えて50%に達し、初めて市場は鈍化する見込みです。これによって、悪戦苦闘中のRIM、Googleが新たに買収したモトローラ、覇者であるアップル、すべてのプレーヤーに影響が及びます。ワイマン氏が予見する展開は以下の通り。
■成長鈍化成長路線にある市場では、誰もつまずくことはありません。しかしスマホの市場シェアが50%に達するとなると、現在の45%成長は鈍化し、残り50%の取り込みは非常に困難となります。時間をかけつつ、新しい需要が古いモデルに置き換わり、より高速な4G ネットワークへのアップグレードが促進されるでしょう。
■競争激化スマホ戦争が今後もさらに激化するとは想像しにくいことですが、ワイマン氏によると、鈍化する市場において競争激化は避けがたいとのこと。
しかし、iPhone 5をリリース予定のアップルはまだブームを巻き起こす可能性を備えており、今秋デビューのあかつきには、サムスンとともに、ハイエンド市場を独占するだろうと見られています(とりわけ利益面で)。これは、そのブランド力、携帯キャリア各社による広範なサポート、部品仕入れ原価の安さなどによるもので、特にアップルの場合、アプリのエコシステムの繁栄も大きいです。またローエンド市場では、中国の華為技術有限公司(Huawei)などが占有し、RIM、ノキア、ソニー、Googleのモトローラ、HTCは置いてきぼりを食らうでしょう。
■コンテンツとサービスは、成長と市場価値の発生場所にありワイマン氏が言うには、iPhoneとその他競合のデバイスハードウェアとしてのギャップは狭まりつつあります。プロセッサー速度、ストレージ(容量)、スペックの格差はますます小さくなっています。しかしユーザー経験という点は例外です。シームレスなユーザー経験を可能にする統合性への鍵は、ソフトウェアだということはよく理解されている所です。
アプリ、インターネット(クラウド)を基にしたサービス、コンテンツこそ、ユーザー経験を充実させるものです。単にデバイスが重要なのではありません。リソースをクラウドに送り込むアプリと経験を可能にするデバイスがいかに「効果的であるか」が重要なのです。すべてのデバイスがこの点において等しいわけではないのは、もちろんです。
よって、狭い意味でのデバイスの重要性が低くなっているとはいえ、まだアップルの優位性は揺らぐことはないでしょう。
現在では、ロケーションベースのアプリ、モバイルコマース、ウェブベースのサービスが新たに生まれてきています。これらが今後どうなるか明確には分かりませんが、Googleがすべての情報(ビジネスの場所、交通、実態的人口統計)にジオタグを付け、巨大な地理・経済・人口動態的なデータベースを構築しようとしているのは早期の手がかりとなるでしょう。
■無線キャリアはモバイルからより多くの収益を得ようと努めているVerizonが最近、「すべてをシェア」するデータプランへ移行したことは一つの兆候だと、ワイマン氏は述べています。携帯キャリアが「単なる通信の担い手」であることを止めようとしているわけではないにせよ、より多くの収益を得ようとする試みであることは間違いありません。これでデバイスメーカー各社には、複雑な影響が及びます。Netflixのようなデータに重きを置くサービス会社にはネガティブな影響が...。変化の速いビジネスをチェックしようとする政府機関など規制者側には、ある意味でポジティブな影響があるでしょう。
■開放系アプローチの勝利が始まる今日のアップルの独占は、成長中のスマホ市場が、ユーザーだけでなくアプリ開発者向けにも機能するデバイスとサービスの首尾一貫したパッケージを必要とする、ということに賭けて大成功を収めたことにあります。これこそGoogleのアンドロイドが、アップルiOSの後塵を拝して二番手にあるとはいえ、開発者らのサポートで苦闘を続けている理由です。オペレーティングシステムのバージョンをコントロールできず、ゆえにユーザー経験もコントロールできないのが、その理由です。
アップルは長期にわたり正しい戦略を取ってきました。概して閉鎖系のアプローチで繁栄を続けてきたその戦略に異を唱えるつもりはありません。しかしワイマン氏曰く、スマホ市場のように市場が後半期に入ると(来年頃からか?)、開放系アプローチを取る戦略が勝利する傾向が高くなるとのこと。これには幾つかの理由があります。
1) 顧客(ユーザー)が自ら複雑な操作を進んでするようになり、そういう選択を好むようになる。
2) ハイエンドからローエンドまで、ベンダー(メーカー)の能力差が小さくなる。
3) 開放系エコシステムの規模及びスダンダードが低コスト化する。
これによると、Googleのアプローチが正しいように思えてきます。しかしGoogle自体は最近、アンドロイドを「囲い込み」つつあります。とはいえ市場の時季が熟してくれば、おのずと二巨頭レースの構図が顕著になってくるでしょう。アップルとGoogleが先頭を争い、その他残りがそれに続きます。しかしこのレースの勝利者は、得た利益が今日ほど大きなものとはならないことに苦虫を噛み潰すかもしれません...。
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