iOS 6デビューもマップアプリに珍名所連発
待ちに待ったアップルのモバイル用OSのアップグレード版であるiOS 6が、ダウンロード可能となって1日ちょっと。ウォールストリートジャーナルの短信ブログJRT(日本リアルタイム)では、地図上で自社が行方不明になったと伝えています。しかも、これは彼らに限った話ではないようです。
こんなことが起きるのは、最新のソフトウェアアップデートで、アップルの新しいアプリ「マップ」が採用されたことに原因があります。普段なら、アップルのドル箱製品とそのソフトウェアに対して称賛を惜しまない日本のツイッターユーザー達が、新しい「マップ」に関しては悪評ふんぷんなのです。
9月20日木曜日に、200以上の新機能を搭載したオペレーティングシステムが公開されました。アップルは、今回の刷新で、これまで競合するモバイル地図アプリを引き離してきたグーグル「マップ」を、iPhone/iPadの標準アプリの座から引きずり降ろしたのです(グーグルジャパンでアップルの新サービスを検索しても、結果は表示されません)。
アップル製「マップ」を使ってさまざまな場所を日本語で検索しようとすると、まるで言葉が通じないような体験に遭遇します。例えば東京郊外にある昭島駅の次の駅は、「パチンコガンダム」という奇妙な名前が表示されます。また、山口県沿岸の岩国市にあるいくつかの地理上の位置を検索しようとしても、ハングルでのみ表示されます。さらに、東京の二大空港の1つであり、グーグル「マップ」でも誰に聞いても「羽田空港」と呼ばれている空港は、アップル「マップ」では「大王製紙」と表示されます。これは日本のティッシュメーカーの雄ともいうべき会社名です。
検索結果は日本語と英語の両方で表示されますが、検索可能な要素はごく制限されています。特に英語で検索したときの制限が顕著で、東京の名所や観光スポットすら検索に引っかからないのです。これでは、英語話者は東京タワーもレインボーブリッジも見つけることができないでしょう。
では、「ハチ公(Hachiko)」はどうでしょうか? これは東京都渋谷の有名な待ちあわせスポットであり、「世界一混雑する交差点」のすぐ隣りにあります。しかし、アップル「マップ」では、映画「ロスト・イン・トランスレーション」で有名になった愛知県のとある場所(羽知古)が示されます。この土地は、上記の凄まじく混雑する交差点から320kmも離れています。
アップルの弁によれば、「新しいマップは、従来と地図の見せ方を変えた」とのことですが、今のところさほど違いはないように見えます。例えば、「東京駅」と言えば、首都東京の通勤の中心であり、その周囲の商業地域には高層ビルが立ち並んでいますが、アップル「マップ」では、まるで荒涼たる荒れ地に囲まれたトウモロコシ畑のように見えます。中には、新宿駅のように多くの情報を表示できるものがありますが、これはヤフージャパンが直接検索するユーザーのために、より詳細な場所情報や近辺のサービス情報を表示しているためです。
都会の住人にしてみれば、やっかいな変更をしてくれたものです。せっかくスマホの地図検索サービスのおかげで、東京の迷路のような裏通りや、ごみごみした場所にある隠れ家的スポットへのナビゲーションが楽になったというのに。東京では、ほとんどの建物に番地が表示されないのです(もっとも、東京の番地は、規則正しく順番に付けられているわけではないので、これはさほど問題ではありませんが)。
地図上に車の販売店、コンビニ、駅などの表示があれば、自分が正しく目的地に向かっているかを知る格好の目印になります。グーグル「マップ」ではこの種のデータが豊富でした。しかしアップル「マップ」は、現時点ではさほど充実していません。東京を本拠地にするデジタル地図の会社「インクリメントP株式会社」では、現在アップル内製のサービス用に、地図情報を提供しています。同社はこれまでiPhoneとiPad向けに日本語の地図アプリを開発した実績があります。
例えば、アップル「マップ」で皇居を検索することは可能ですが、皇居を囲むお堀の外側は、さほど詳しく検索することができません。ここは東京のど真ん中だというのに! グーグルで検索すれば、皇居の周囲にあるコンビニ、ホテル、駐車場、学校、レストラン、その他目印になるような建物が詳しく表示されます。これに比べればアップルのものは情報が少ないと言わねばなりません。
しかし、新しいサービスにより可能になった機能として、最寄りのアップルストアを検索する機能が挙げられます。これを使えば、1回の検索で複数の店舗が表示され、好きな店を選ぶことができます。iPhone 5が発売されたら購入しようと思っている人には、いいヒントになるでしょう。