シャープの高解像度IGZO(酸化物半導体)技術が、次世代iPad 3で採用される見通しが強くなっています。米国のCNETが、日本の京都を拠点としているディスプレイサーチのアナリストであるチャールズ・アニス氏とのインタビューを元に伝えています。
シャープのIGZO技術がiPad 3採用枠から外れるとの噂もありますが、アニス氏は、採用見通しの方が強いとの見解です。iPad 3は9.7インチ2048×1536解像度LCDで、現行iPad 2の1024×768パネルのそれを大きく上回ります。
以下は、CNETが行ったアニス氏とのインタビューです。
質問: iPad 3とシャープのIGZOディスプレイ技術の現在の状況はどんなものでしょうか?
アニス氏: シャープはすでにIGZOの大量生産に入っている。それは間違いない。だがアップルがどう出るか誰にも分らない。この点については、LG電子のディスプレイが受け入れられる可能性もないわけではない。アップルだけが知っていることだ。現在、商用のIGZOフラットパネルディスプレイは一台も出回っていない。もしアップルがこれをiPad 3に採用し、4月に販売開始になるとすれば、それは世界初の出来事だ。だから我々はiPad 3のリリース日時を4月頃と考えている。
質問: IGZO技術が、従来の技術より優れている点は何ですか?
アニス: 従来のアモルファスシリコンより優れている点は、IGZOにはより高い電子移動度があることだ。基本、これによって、従来型よりも多くの電子が薄膜トランジスターを通過できる。よって、より小さい薄膜トランジスター(TFT)が生産でき、ディスプレイ背面をたくさんの光が通過できることにもなる。
よって、ディスプレイ輝度が増し、バックライト部のLEDの数を減らすことができる。つまりコストも軽減できるというわけだ。またバックライト部の光学フィルムの数も減らすことができ、これもコスト削減につながる。それにバッテリー寿命も延ばすことができる。これらが、新しい超高解像度モバイルディスプレイにおいて重要な点だ。
シャープは一歩リードしているが、サムスンやLGディスプレイはマルチ型IGZOパネルを出していることも忘れてはならない。
質問: シャープのIGZOは単独で採用されるのでしょうか?アップルはまた、韓国のディスプレイメーカーともビジネスを共にしており、上手く行くものでしょうか?
アニス氏: とてもいい質問だ。ちょうど社内で議論していたことだ。これまでのアップルの歴史を振り返れば、先例のあること。アップルは一つの製品に異なるパネル技術を採用し、それを内密にしていたことがある。あるいは未だいくつか違うアプローチもありうる。一つは、IGZOを基にしたパネルをある地域で採用し、また別の地域では韓国のアモルファスシリコンを基にしたパネルを採用する可能性がある。
有力な見方は、仕様のバランスをとることだ。例えば、シャープのパネルは高い透過率をもち、よってバックライトのコストを下げることができる。だから韓国のアモルファスシリコンパネルを基にしたモデルで使用されるものよりも安価で済むかもしれない。となると、iPadは外見とスペックは同じでも、中身は異なることになる。ひょっとしてシャープのパネルのコストは高くなるかもしれないが、より安価なバックライトのおかげで、全体のコストは安くなるかもしれない。我々はそういう見通しを持っている。しかし、アップルが一つの商品に複数の技術を採用することは、謎といえば謎だ。
質問: 類似点は何ですか?
アニス氏: 実際、多くの点で、韓国のアモルファスシリコンパネルとシャープのIGZOはよく似ている。両者とも、IPS方式を取っている。それに同じ種類の液晶技術。よって、幅広い視野角と良い色の不等角投影を持っている。