なぜ私はiPhoneから乗り換えをしないのか?
ハイテク系のライターの多くが、いかにしてiPhoneからアンドロイドへ乗り換えたかについて書いている昨今、米誌TIMEのレギュラー寄稿者であるベン・バジャリン氏は、自分がなぜiPhoneから乗り換えをしないのかについての見解を表明しております。
私には、iPhoneからアンドロイドへ乗り換えたハイテク関連ライター数人の知り合いがいますが、彼らがなぜ乗り換え、自分がなぜ乗り換えないのかについて、ちょっと考えてみたいと思います。
まず私の見解の背景について一言。私は仕事柄、アンドロイド、Windows Phone、ブラックベリーの旗艦モデルとなるデバイスすべてを所有しています。すべて手に持って使ってみました。一定期間それを主なフォンとして使用し、何らかの感想や意見をもつまでに至っています。これはちょっと贅沢なことで、誰もが体験していることではないことも承知しています。しかし、結論を先に言えば、これらはすべて自分向きではないと思っています。
私は昨年、ハイテク機器の選択は所詮、個人の好みの問題であるとコラムに書きました。アンドロイドを選ぶ人もいれば、iPhoneを選ぶ人もいる、それは大きな問題ではないと。そんなことは真面目に議論する価値はないと。私がアンドロイドや他のプラットフォームに乗り換えないことも、どうでもいいことなのです。とは言いつつも、この問題には興味深い点もひそんでいるのです。
長年スマートフォンを使ってみて
私がアンドロイド、Windows、ブラックベリーに乗り換えない理由は、長年にわたりスマホを使ってきたためです。私はスマホデバイスのアーリーアダプター(新商品やサービス、技術などの新しいモノを早期から使用する人達)の一人でした。スマホについては誰よりも長く使っているという自信があります。Kyocera 6035、Handspring Treoなど最初期のスマホをご存知でしょうか。これらが市場に出た頃から、私は使用しています。ややテクニカルなことを言えば、多くの人にとって最初のスマホであるIBM Simonすら使っていました。
かくも長くスマホを使っているので、私は自分の好き嫌いをはっきり言うことができます。この消費者心理という点でより明確なことは、私が自分自身の好悪の理由を自覚しているということです。だからスマホ選びともなれば、自分の好みである機種を瞬時にしてピックアップできます。
今日のスマホ市場で知っておく必要のあることは、スマホ自体は先進国で高い浸透率を示しながらも、長年スマホを保有している人々の率はそれほど高くないということです。数億の消費者にとって、スマホは、初めてまたは二機種目といったところです。よって消費者の多くが、デバイスの好みをうるさく言えるほど経験を積んでいません。だから今日の市場において、自身の好き嫌いを知ろうとして、他のプラットフォームを試してみようと思う人が一定数いることは、無理からぬ話です。
ライターの多くが、iPhoneからアンドロイドへの乗り換えの顛末を書くのも、自然の成り行きです。しばらくアンドロイドを使ってみた後、またiPhoneに戻るライターすらいます。市場の成熟のダイナミズムを理解していれば、なにも驚くことはありません。著名なブロガーがiPhoneからアンドロイドに乗り換えた(またはその逆)と書いたからといって、アップルの運命が決定づけられることはあり得ません。
アナリスト、専門家、ウォールストリート関係者などは、市場シェアの些細な変位を見て、特定プラットフォームまたは企業の健全さを毀損する誤った推測をしがちです。市場シェアのちょっとした落ち込みを深読みして、嗚呼この企業はもう終わりだと囃し立てます。しかし現実は、顧客の志向のブレが、ほんの少し変位を引き起こしているに過ぎないのです。これはどんなハイテク関連市場にいおいても見られる成熟の過程、自然の進化です。このことを理解すれば、もっと冷静な人々が増えると思います。
大切な問題は、顧客が別のスマホのプラットフォームを試してみようとするか否かではありません。そういう人々は常に一定数存在します。本当に重要なことは、顧客が最終的に、どのプラットフォームにコミットするかです。次の10年間で、それがはっきりするでしょう。世界規模で、どのプラットフォームが時の試練に耐えうるのか、自ずと明らかになることでしょう。
iPhoneに留まる
さて表題の、なぜ私はiPhoneから乗り換えをしないのかについて述べてみます。ハイテク機器の選択はとても個人的なことだと、私はこれまで繰り返し語ってきました。私にとって大切なことは、あなたにとって大切ではないかもしれない。あるものを好きになる理由も千差万別というわけです。しかし私にとって、iPhoneに留まることは、モバイル使用時の自分の生産性に関係していることなのです。
アンドロイド(またはWindows Phone、ブラックベリー)を主なフォンとして使用している時はいつでも、生産性が大きく落ち込むのを感じました。これはなにも、私が他のプラットフォームでは生産的になれないという意味ではありません。そうではなく、iOSをモバイルとして使う時、自分がもっとも生産的になれるのです。Eメール、プロジェクトの協力、文書およびタスクの同期、仕事とプライベートで使うメインとなるアプリ、家族との間でのタスクやカレンダーの共用、その他多くの機能において、私の場合、iOS使用時がもっとも生産的になれるし、仕事とプライベートにおいて効果を発揮するのです。
他のプラットフォームに他意はありません。iPhone以外のデバイスにもいい所はあります。しかしそれが、トレードオフするほどの価値には思えないのです。
とは言え、私は、市場の実験性には賛成です。友人や家族が、今持っているスマホと比較したいから、新しいスマホを試してみたいと言います。私は、彼らにとってどれが相応しいかを奨めるために、重要なポイントを伝えます。
市場の実験性は、市場が成熟するための決定的な要因です。ハードウェア、ソフトウェア、サービス、何であれ、それらが顧客にソリューション(解決策)を約束するために不可欠です。誰もが同じモデルの自動車に乗っているわけではありません。同様に、誰もが同じスマホプラットフォームを使うわけではありません。これは顧客にとっても良いことで、市場の健全性にとっても良いことです。私たちは、このような市場の実験性に過剰反応しないことを学ぶ必要があります。顧客が、新たに進化した技術から、自分の欲しいものと欲しくないものを学ぶとき、市場の実験性は自ずと生じてくるものなのです。
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