AppleとGoogle 「スマホのOS寿命10年単位説」を覆せるか
IT業界には、よく知られた「ムーアの法則」のようなものがあります。最新のスマートフォンのOS(オペレーティングシステム)に関するものでは、同じように興味深い経験則として「OSの寿命は10年単位である」という説があります。これについて、米Forbesが報じております。
この経験則、あまり聞こえは良くありませんが、アップルとGoogleという世界最大級のモバイルOSにとっては意味深な示唆を含んでいます。アップルが最初にiPhoneをローンチしたのが2007年6月、iOSは生まれて4年半が経過。他方、Googleの最初のアンドロイド系モバイルのローンチは2008年9月、3年超えの歳月が流れました。
このOS寿命10年単位説によれば、iOSもアンドロイドも、市場シェアの頂点に近づきつつあることになり、その後は衰退することが予想されます。カナダの投資銀行RBCキャピタルマーケッツのアナリストであるマーク・スー氏は「OSが10年サイクルの真ん中でピークを迎えることは、歴史を見れば明らかだ」と、投資家向けの書簡に記述しました。ということは、アップルもアンドロイドも、それぞれ少なくとも50万に上るアプリを持つほど揺ぎない安定感と勢いがあり、また多岐にわたるエコシステムを備えながらも、今後5年の維持可能性は、依然として不明瞭ということになります。
アップルとアンドロイドは他のOSを大きく引き離していますが、例えばマイクロソフトのウィンドウズフォンのOSもじわじわ人気を博しつつあり、また、サムスンとインテルに主導されるオープンソースのTizen プロジェクトのようなOSも胎動しつつあります。初のTizen系デバイスは今年後半にデビュー予定ですが、「もうかなり活気づき始めている」とスー氏。
このようなOS寿命10年単位説を、ハーバード・ビジネス・スクール教授のクレイトン・クリステンセンの1997年の著書『イノベーションのジレンマ- 技術革新が巨大企業を滅ぼすとき』になぞらえる向きもあり、どんなに大成功を収めた企業であろうとも、絶えざる革新と破壊的イノベーションなしには、市場シェアを失ったり潰れてしまう可能性があるという教訓とも読めます。
Strategy Analytics Associateの所長であるアレックス・スペクター氏は「いかなるプラットフォームも、永遠ではない。より良いもの、より新しいものが首位の座を目指して駆け上がってくる」とし、「スマホ業界今後5年の争点は、アップルとアンドロイドがその市場シェアトップを維持し続けるか、あるいは、新たなプラットフォームが誕生してくるか、そのどちらかだろう」と語りました。
RIMのブラックベリー、マイクロソフトのウィンドウズモバイル、パームの名高いOS、ノキアのシンビアン、これら4ついずれも世に出て10年が経過、やはりシェアは縮小傾向にあります。対照的に、iOSとアンドロイドは急速に成長中、衰退の兆しも頭打ちの兆しも一切ありません。少なくとも北米市場の動きはこのようなもので、他地域では異なるトレンドを示すかもしれません。例えばシンビアンは、米国内ではいまいち奮わずでしたが、他地域では大きな伸長を遂げました。
しかしながら、このような見方はスマホ業界の動向と歴史を単純化したもの。実際は、パームのOSはwebOSに移り変わり、ノキアはシンビアンをウィンドウズフォンへ、RIMは型番落ちのブラックベリーOSをブラックベリー10/QNXへ、マイクロソフトはウィンドウズモバイルをウィンドウズフォンへ、といった動きがあり、各社は5年後のピークを迎えた後、「刷新」の階段を駆け上がり始めています。前述のスペクター氏は「マイクロソフトのウィンドウズフォンは、ウィンドウズモバイルと全く思想が異なっている。ウィンドウズフォンは新たな10年サイクルのとば口に立っている」と述べました。
OS寿命10年単位だからと言って、必ずしもあるOSの市場シェアがゼロに落ち込むということではありません。例えばブラックベリーは、頂点からは転落しましたが、北米の大手携帯キャリア内では一定の存在感を今も維持しています。「10年単位説は、全てのプラットフォームに当てはまるわけではない」とスペクター氏。
実のところ、このOS寿命10年単位説の真偽は、まだ不明です。マネジメントの変化、資金繰り、タイミングの悪い提携などで、パームのOSは衰退しました。RIMとノキアも各OSのアップデートが遅く、北米ユーザーに負担をかけました。マイクロソフトのウィンドウズモバイルは肥大化し過ぎ、完全な新規まき直しを余儀なくされました(ウィンドウズフォンへ進化)。
さて、アップルとGoogleですが、両社とも今のところ上記のような失態はありません。絶えざるイノベーションを継続しさえすれば、OS寿命10年単位説の呪いなんて、どこ吹く風というわけです。
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