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アップルはまだ死んでいない:iPhone 5sとiOS 7がもつ秘密兵器とは?

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かのスティーブ・ジョブズの開発者への影響を言い表す造語である「現実歪曲空間」は後退し始めているように見えますが、いいえ、まだアップルはトップランナーです。英国のthe guardianが、新たに登場したiPhone 5sとiOS 7をめぐって、アップルの健在ぶりを伝えています。

まだジョブズが存命だった頃、多くの批評家らは、アップルのカリスマリーダーを取り囲む「現実歪曲空間」にかるく噛みついたものでした。ジョブズが発表したデバイスやサービスを見て、そこに居合わせた参加者らはみんな、それが企業のプレスカンファレンスというよりも、まるで宗教的な再生の儀式を見ているようだと感想を述べました。そのようにして、iPod 、iTunes、OS X、iMac、MacBook、iPhone、iPadが生まれたのでした。

これらの製品は既存の業界モデルに巨大な風穴を開ける起爆力を持っており、アップルの影響力が大きくなるにつれ、これを指導した人物はだんだんと、先見の明のある教祖的存在、聖者、大御所と見られるようになっていきました。

しかしその人物は世を去り、スティーブ・ジョブズ的なるオーラも消えてしまいました。しかしまだ現実歪曲空間はしぶとく残っているのですが、今それは逆方向に動いているようです。もう魔術師は死んだのだから、アップルを世界でもっとも価値の高い企業に仕立て上げたマジックも終わったのだと人々が思うのも無理はありません。

ジョブズに比べて、その後継者であるティム・クックCEOは、カリスマ性に乏しいと見られました。ジョブズの死後も、しばらくアップルは繁栄を続けていますが、それはジョブズ時代のイノベーションをクックが発表してきたからに過ぎません。結局のところ、井戸の水は干上がってしまったのです。

こういう経緯の中、不運なクックは9月10日、新iPhoneを発表。安価モデルのiPhone 5c、より高級志向のiPhone 5s、そして新モバイルオペレーティングシステムのiOS 7が披露されました。その発表会はいつものように喝采で迎えられましたが、メディア全体の反応は、かろうじて欠伸が出るのを堪えられるといったものでした。確かにiPhone 5cは鮮やかでカラフルな品揃え、しかも安価。ですが、ローエンド市場に参入できるほど安くありませんでした。

iPhone 5sはより強力なプロセッサー、モーションセンサーチップ、より機能向上したカメラなどを備えますが、それは、ひいき目に見ても先行機種とほぼ同じです。もちろんユーザー認証の指紋認証センサーは別です。しかしiOS 7にかぎって言えば、唯一興味深い点は、これまでのiOS 6の偽3D的な印象から、フラットなアイコンに変わったことでしょう。やはりアップルは、その魔力を失ってしまったと言わざるを得ません。

と、以上のような反応が、メディアの言説を占めていたかと思います。これに反論するのは難しいかもしれません。さてここで、もう一つの見方を提示したいと思います。

アップルが9月10日に成し遂げたことは何だったのか?アップルは、モバイルデバイス向けとしては初となる、64ビットのハードウェアとソフトウェアを発表したのでした。どのモバイルプロセッサーも32ビットチップであることから、実際に使えるのは4GBのメモリのみという状況で、64ビットという数字はきわめて重要です。

現状では、64ビットはモバイルデバイス向けとしては十分過ぎる数値(デスクトップ向けとしても)。しかしよりパワフルなPC向けとしては十分ではありません。となると、iPhone 5sの巨大なメモリー量を備えるA7プロセッサーが提起する真に考えるべき問題は、なぜ今それが必要なのか?ということになります。アップルが次に何を企てているのかについての手がかりがここにはあるのでしょうか?

アップルが今考えていることは、その他の競合であれば来年考えることだとしましょう。先の問題に対する解答は、実に興味深いものとなります。記憶力の良い方ならば、フロッピーディスク、内部モデム、CD/DVDドライブ、ラップトップハードドライブなどを最初に発表したのは、アップルだったことを覚えているでしょう...。

iOS 7のメディア報道の大半が、そのラジカルに変化したユーザーインターフェースの「ルック(look)とフィール(feel)」、その簡素さとミニマリズムに集中しています。これらはもっぱら、今やアップルのハードウェアとソフトウェア両方の責任を負うようになったジョナサン・アイブに帰するもの。これらは的を得ています。結局、多くの人々にとって一番大切なのは、デバイスのインターフェースです。このiOS 7の「アップグレード」で使い勝手が良くなったでしょうか?その答えは、間違いなしの「イエス」です。

しかし専門筋に言わせれば、iOS 7には二つほど、特筆すべき点があるようです。一つは、アップルが、64ビット環境向けの複雑なオペレーティングシステムを完全に書き換えることができたということ、それを期日通りにほぼバグ無しで出荷したということです。

もう一つは、何年ものあいだインターネットのエンジニアを困らせてきた問題をiOS 7が解決したその方法です。あるネットワークへの接続モードが切れると、デバイスが別のモードにシームレスに切り替えをするというその方法をどうやって確保したのか?

その解法は、マルチパスTCPと呼ばれています。そして何と言うことでしょう、iOS 7はこれを組み込んでいるのです。これについては、まだたくさんの新iPhoneに関する報道を研究する必要がありそうです。

アップルはもう終わったと考えている人は、もう一度考え直しを迫られることでしょう。

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